猫ロケット

夜空の星はねこの輝き。アニメ感想とか書きます。

映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」みたよ!

 11月14日*1プリキュアの映画を見た。日曜の午後の映画館、大きなお友達の姿はなく、周囲はひたすら親子連ればかりだ。入場者特典として「ミラクルフラワーライト」(プリキュアがピンチに陥ったとき、これを振って応援する!)が配られていたが、私には配ってもらえなかった。残念な気持ちになった。

 映画のタイトルは「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」である。タイトルを解析していくと、まず『ハートキャッチプリキュア!』は「ハートキャッチプリキュア!」を主題としていることを示しているので、えりかはつぼみのつぼみを優しくキャッチする。OPの歌詞に「それぞれの胸 ふくらむつぼみは」というフレーズがあることに留意されたい。あるいは、やぶうち優の性教育漫画「ないしょのつぼみ」を想起してもよい。


 さて、映画の舞台はパリだ。ファッション部のつぼみ、えりか、いつきはパリに滞在することとなった。期間は不明、そもそも学校はどうしているのかといった疑問が湧くのだが、作中では特に言及されない。まあ重要なのはプリキュアがパリに滞在することなので、その過程はどうでもいいのかもしれない。私も正直どうでもいい。

 えりかの両親は有名なファッションデザイナーで、両親が主催するファッションショーの準備のため、フランスの知り合いにアパートを借りていた。その際に娘の友人も誘うことにして、ついでにその子たちにモデルもやってもらうことにした。

 モデル選定ってそんな適当でいいのか。コネか。世界的デザイナーともなるとまずはコネで実績を作って、実力はあとから付ければいいとかそういう発想なのか。こえーなセレブは。確かにつぼみは世界でも五指に入るかわいさだが、だからといってモデルの適性があるとはちょっと言いがたい。つぼみが上がるべき舞台はえりかの寝室ではないのか。


 ともあれ、そういう流れなのでファッション部とは関係ないゆりもパリに来ていた。彼女はプリキュア4人のなかで一人だけ高校生だし、しかもあんまり友達いなさそうなのだが、一応えりかの姉ももかと親友という設定なので辻褄は合っている。


 ところでゆりはかわいい。ゆりは自分の不注意からプリキュアとしての力を失ったことをずっと後悔していた。何度も何度も自分を責めた。だからこそ、後輩のつぼみたちにはそんな絶望を味わって欲しくないと願い、正しい方向へ導こうとする優しい心の持ち主である。しかし、同時に、力を持つことの意義に無自覚な彼女たちへ苛立ちも抱いていた。嫉妬かもしれない。あるいは、昔の自分を見ているような苦々しさだったのかもしれない。

 でも、そんな自分の気持ちに向きあうことは大変なことだ。できればやりたくない。そこで彼女がどう対処したのかというと、ほんとは大してクールでもないのに一匹狼ぶりつつ、周囲と距離を置いていたのだった。

 でもプリキュアの力を取り戻した最近の彼女は、だんだん本来の熱い性格を見せ始めている。実は説教臭いのは元からだった。


 さて、パリだ。

 秋晴れの抜けるような青空の下、つぼみ、えりか、いつきの三人が広場を散策している。
 どこへ向かうでもなく歩いているうち、いつきのポケットから何かが落ちた。一番後ろを歩いていたつぼみがそれに気付き、拾い上げる。
「いつき、落し物ですよ」
 つぼみが拾ったものは、手のひらに収まるほどの小さな平べったい袋だった。袋の縁はギザギザになっていて。手でちぎって簡単に中身を取り出せるようになっている。日に透かしてみると、中にはゴムでできた輪っかのような、柔らかいものが入っているようだった。
「ありがとう――っ!?」
 いつきはお礼を言いかけて、はっと息を呑んだ。
 つぼみが手のひらに無造作に乗せているそれは、明らかに彼女には似つかわしくない物体だ。
「なんですか、これ?」
「ええっと、それはね……」
 人差し指で首筋をかきながら、彼女にしては珍しくきまりの悪そうな顔をして、助けを求めるようにちらっとえりかを見やる。えりかもまたつぼみが無造作に手に取っているものの正体に気づいて、顔を真っ赤にしていた。
「えりか、大丈夫ですか? 熱でもあるんじゃないですか?」
「ななななんでもない! 平気、へーきだから!」
「ええっと、その、つぼみ。夕食のあと、僕の部屋に集まろう。そのときに説明するよ。とにかく、拾ってくれてありがとう」
 怪訝そうな顔をするつぼみだが、ここは花の都パリ。彼女の興味を引くものはあらゆる所に転がっていた。彼女はすぐに次の目標を見つけ、歩き出す。
 いつきとえりかはほっと胸をなで下ろした。
「てゆーかいつき、そういうの持ってたんだ……」
「あははは……」


 もちろんファッションショーもやる。えりかはファッションショーの服作りで大忙しだ。


 えりかはファッションが好きだ。両親がデザイナー、姉がモデルという環境に育ったからという理由もあるけど、それだけじゃない。
 服が変わるだけで違う自分になれた気がする――単純なようだけど、新しい服を着たときのそんな感覚を、彼女は心底から愛しているのだ。なりたい自分を思い描き、新しい自分を作りだすこと。

 ファッションには人を変える力がある。

 アパートの一室、えりかは一心不乱にミシンを走らせていた。その間、ずっと何事かをつぶやきつづけている。そんなえりかを遠巻きに眺めているのがゆりだった。
「あなた、服を作るときはいつもそんな風なの?」
「知ってるゆりさん? 生地に『ありがとう』って言いながら縫うといい服が出来上がるんだよ。パパとママに教わったんだー」
「……科学的な根拠がないわ」
「もー、ゆりさんにはロマンがないんだから。本当は違ってても、もしかしたらそうかもしれないって思ってるほうが楽しいじゃない」
「……そうね」
 なんにせよ夢中になれるものがあるのはいいことだ、とゆりは思った。


 決して長くはない上映時間で、こういった短い場面が淡々と描写されていく。全体として見るとまとまった繋がりは薄いのだけれど、遠い異国の地で滞在するなか、4人がお互いの知らなかった部分を見つける、という筋立てになっている。学校を中心とした普段のコミュニティではなかなか描きにくい、微妙な心理描写が多めなのが特徴的だ。
 ちょっと変な言い回しだけど、非日常な日々での日常系というか。

 これは海外「旅行」だとうまくいかない。慌ただしいスケジュールで観光名所を巡るなんていうんじゃ、お互いゆっくり話す時間もないしね。非日常でありながらもある程度時間に余裕があるからこそ、こういった何気ない、穏やかながらも濃密な交流を描くことが可能になっている。バスで観光地を回るパックツアーみたいな映画にならなくて本当によかった。


 まあ、冒頭に挙げたいつきのエピソードや、ゆりが泥棒を撃退する場面、つぼみが食中毒で入院するくだりなどを「穏やか」の範疇にいれてもいいのか、というのはあるけど。


 で、このままだと普通の意味でのオチがつかないので、悪いやつが出てきた。実は悪くないやつなんだけど引っ込みがつかなくなって世界滅ぼそうとしているので超めいわく。最後にプリキュア元気玉を食らって改心した。世界は滅びなかったよ。*2

*1:ちなみにこの日は私の誕生日だった。

*2:今さら言うのもなんだが、このエントリは事実をほとんど含んでいない。