読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

猫ロケット

夜空の星はねこの輝き。アニメ感想とか書きます。

「魔法少女まどか☆マギカ」12話「わたしの、最高のともだち」

アニメ 魔法少女まどか☆マギカ

 「まどか☆マギカ」の世界を貫くのは徹底した因果応報だ。何かを得るにはそれと同じだけの代償を支払わなくてはならない。魔法少女は叶えた願いの分だけ、必ず、それと等価の絶望を抱え込む。その絶望に耐え切れなくなったとき魔法少女は魔女となり、希望によって生まれたはずの魔法少女は、今度は呪いを撒き散らす存在へと成り果てる。

 作中で杏子が言ってたように、希望と絶望の差し引きはゼロなのだ。

 まどかの願いは、全ての魔女を生まれる前に消し去ること。魔法少女が力尽きるとき、まどかはその傍らに立って絶望を引き受ける。魔法少女たちが、希望を信じて死んでいけるように。魔女にならずにすむように。

 そうして魔女は消えた。魔女が消えたことすら誰にも分からないほど完全に消え去った。魔女が消えたなら「魔女を消す」という概念は誰にも認識できなくなる。まどかの存在を認識できる者はどこにもいなくなる。当の魔法少女たちですら。


 そうして新しい世界が始まった。魔女の生まれない、新しい世界。ひとり少なくなった世界。


 ところで、まどかの願った世界も結局のところ希望と絶望の差し引きはゼロなままだ。魔法少女たちはこれまでと変わらず、叶えた願いのぶんだけ戦い、傷つき、そして死ぬ。魔法少女の置かれた状況は、根本的な部分では何も変わっていない。絶望を引き受ける人間が変わっただけで、この世界でもやっぱり希望と絶望の差し引きはゼロのままだじゃないのか?

 もちろん違う。

 ほむらがまどかの事を覚えている。まどかのリボンを付けている。その奇跡のぶんだけ、希望の総量は増えている。
 差し引きはゼロじゃない。ほんの少しだが、新しい世界には希望のほうが多いのだ。

 まどかがほむらに「がんばって」と語りかける場面は、この世界に奇跡と、そして信じるに足る希望があるのだと感じさせてくれるラストだった。

===============================================

 巴マミについて。
 マミさんがまどかに「ノートを返す」場面は感慨深い。ノートはまどかにとっての「魔法少女」像だったわけで、それが彼女のもとに戻ってくるというのは、まどかが魔法少女として自身の願いと共に歩む決意を固めたということだ。
 
 マミがまどか(とさやか)に与えた影響は大きい。困っている人を助け、誰かの役に立つこと。そんなマミの信念を、まどかは受け継いでいる。あるいは、まどかの抱いていた魔法少女像に近い物を体現していたのが、マミだったと言えるかもしれない。

 ノートを渡す相手が居る。後輩が居る。彼女の背中を見てくれていた人がいる。
 彼女の戦いは無駄じゃなかった。マミさんの孤独は癒されたんじゃないかって思うのだ。

 まどかが魔法少女になったらお祝いしよう、という約束も果たしたことだしね。



 佐倉杏子について。
 杏子にとって美樹さやかは「そうなるかもしれなかった自分」なんじゃないかって気がする。他人のために奇跡を願い、その結果が思惑を外れて自分自身を苦しめてしまうところは、二人が共通して味わった挫折だ。
 杏子はその挫折を「自業自得」として受け入れ、以後は自分自身のためだけに魔法を使うという形で挫折から立ち直ったんだけど、さやかはそうじゃなかった。挫折を挫折のままに無理やり乗り越えようとして、そして心が砕けてしまった。

 これは完全のぼくの想像なんだけど、二人の行く末を分けたものは、単純に時間だったんじゃないかって思う。
 杏子には挫折と向き合う時間があった。さやかにはなかった。ただそれだけのことで、だから立場や条件が違えば、杏子はさやかになっていたかもしれないし、さやかは杏子になっていたのかもしれない。

 「さやか」という鏡を通していたぶん、杏子だけが魔女の孤独を自分のものとして見つめることができていた。だからこそ9話で見せた「あたしがいっしょにいてやる」という祈りと献身につながるのだろう。

 杏子はきっと、全ての魔法少女を魔女になる前に救いたいというまどかの決意を素直に応援していて、彼女がまどかに送るまっすぐな激励は本当に杏子らしいと思った。



 美樹さやかについて。
 まどかは全ての魔法少女の絶望を引き受けた。絶望を引き受けるということは、その絶望と対になる希望を全て肯定するということでもある。もちろん、さやかの願いも。
 たとえ思うような結果にならなかったとしても、奇跡を願う行為自体は尊い。それがまどかの信念だ。
 さやかの選択はひょっとしたら間違ってたかもしれないんだけど、それでもさやかの意思を尊重して、さやかの選んだ世界を見届けさせた。そこがこの世界の優しさであり厳しさでもあるんじゃないだろうか。

 きっとさやかは、もう少しゆっくりと気持ちを整理する時間があれば、自分一人でもこの結論に辿りつくことができたんじゃないかな。マミさんの背中を見て、まどかに支えられ、杏子とも和解して。
 恋は実らなかったにせよ、自分の願った奇跡の尊さを抱きしめて、きっといい魔法少女になれたと思うのだ。



 暁美ほむらについて。
 まどかの願った世界も、結局のところ希望と絶望の差し引きはゼロなままだ。
 世界のルールは、根本的な部分では何も変わっていない。

 だけど鹿目まどかはべつに世界を救おうとしてたわけじゃなくて、ほむら、さやか、マミ、杏子、そして過去の魔法少女たち、そういった身近な人々の絶望を何とかしたいと真摯に考えていただけだ。世界が完全かどうかなんてことは問題じゃない。
 交わした約束を、信じていられるかどうか。これは、ただそれだけのごくささやかなお話なのだ。

 ほむらが守ったまどかに守られ、いまほむらは彼女が願った場所に立っている。希望の証を身につけて。